びび子の日記…

人生半ばで獣医師になった人間が、仕事のこと、将来のこと、愛猫のこと、日常のことなどを綴ってみました。

愛しの犬

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 最近、ある会社のWEBサイトで犬の行動に関するコラムを書かせてもらうようになった。何人かの知り合いの方に宣伝し、感想をいただいた。その中に、「私は自分の犬に何もしてあげられなかった。早くにこのコラムを読んでいればと悔やまれます」といった内容のことが書かれてあった。

 確かにコラムでは、犬の気持ちをもっとよくわかってあげて…的なことを書いている。そんなことを言う獣医師は、さぞかし自分の犬を立派に育てたのでしょうと思うかもしれない。

 いえいえ、実は違うのだ。

 私はラブラドールの女の子を飼っていた。名前はブリス。「至福=この上ない幸せ」という意味である💖とても人懐こくて、天真爛漫な子だった…ちょうど1歳になる時に初めてペットホテルに預けるまでは…。

   一泊だったのだが、そのホテルは他のお泊りのわんこ達とフリースペースで一緒に遊ばせるというのを売りにしており、そこが気に入って利用することにしたのだ。しかし、初めて飼い主と離れて、知らないわんこ達がわらわらと寄ってきて、彼女はさぞかし怖かったんだと思う。それ以来、犬が苦手な子になってしまった。攻撃的に寄ってくる子ならまだしも、フレンドリーに遊ぼうと言ってくる子に対しても攻撃するようになってしまったのだ。しかし、ラブラドールという犬種から、誰とでも仲良くなれるはずという先入観もあり、訓練すれば大丈夫なんて思ってしまった私は、長期の預かり訓練を受けさせたり(2ヶ月後にストレスからくる血便をするようになり終了)、警察犬訓練所でトレーニングをしたり(即座にオスワリをしなかったため、リードで叩かれ耳から出血をし終了)、それはそれはひどいことをしてきた。

 一通りやって私はやっと気づいた。この子は他の犬と仲良くしたいなんて思っていないんじゃないかと。ドッグランで他の犬と遊ばせたいなんて飼い主のエゴではないかと。飼い主と楽しく暮していれば幸せなんじゃないかと。それ以来、彼女はとても穏やかな犬になった。幸いにも、唯一相思相愛の黒ラブくんと出会い、一緒にお散歩したり、お出かけしたり、とても楽しく過ごせるボーイフレンドもできた。

 そんなこともあって、今私が携わっている行動治療は、彼女の存在なしには成り立たない。私の中に彼女への思いが常にあり、彼女がいたからこそ、問題行動で悩む飼い主さんの気持ちも痛いほどよくわかる。

 獣医さんだからって、立派に犬を育ててきたわけではないんですよ。

 彼女は2年前に14歳半という寿命をまっとうして亡くなった。彼女と過ごした14年半は私の一生の宝物である。

 上の写真は若かりし頃の彼女で、下の写真は晩年(12歳くらいかな)の彼女です。

美人でしょ💕

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