びび子の日記…

人生半ばで獣医師になった人間が、仕事のこと、将来のこと、愛猫のこと、日常のことなどを綴ってみました。

猫の排泄に関する問題

 猫の問題行動の相談で一番多いのは、攻撃行動です。その次に多いのが、不適切な場所における排泄の問題です。はてなブログでも、この排泄の問題で悩んでいるという記事を読みました。

 

 今回はこの排泄の問題について、(私の勉強も兼ねて)お話しします!

 

 不適切な場所(基本的には室内の猫用トイレ以外の場所)に排泄物(尿や糞便)が残されている場合には、マーキング行動と不適切な排泄行動の2つが疑われます。それぞれの原因や治療方法は違ってくるので、まずはその鑑別診断が重要になります。なお、糞便によるマーキングはまれです。尿によるマーキング行動は、別名スプレー行動ともいいます。

 

 はじめにマーキングと不適切な排泄の特徴をそれぞれ簡単にまとめてみます。

 

【マーキング】

     ・姿勢は通常は立位(座位のこともある)

     ・排泄量と回数は少量頻回

     ・トイレをちゃんと使うこともある

     ・対象場所は、通常垂直面(水平面のこともある)で、決まった場所にする

     ・排便は通常はトイレを使用する

 

【不適切な排泄】

  ・姿勢は座位

  ・排泄量は多量というかいつもの一回分のおしっこの量

  ・トイレは使用しなくなることが普通

  ・対象場所は、好みの場所(飼い主の匂いがする布団とかが多い)

  ・排便も通常は不適切な場所で行う

 

 マーキングは、未去勢、去勢に関わらずオスに多いのですが、メスでも起こります。縄張りに関する不安や社会的な不安(新しい動物が家族に加わったり、引っ越しなどによって環境が変化するなど)だったり、情緒的な不安(外猫を家猫にするために室内に閉じ込めたり、飼い主が長期不在だったり)、他の猫による挑発的な刺激(繁殖期のメス猫が存在したり、窓から外猫がみえたり)によって、マーキング行動が増加すると言われています。対策としては、不安を取り除いてあげられるような環境対策がまず必要になります。それから、未去勢のオスの場合は、去勢をすると軽減することが多いので、去勢をおすすめしています。具体的にはもっと方法があるのですが、マニアックすぎるので今回はやめておきます(笑)。 

 

 一方、不適切な排泄は、医学的疾患が原因となることが多いので、各種検査を行って鑑別することが必要となります。多い疾患は、膀胱炎、尿道障害、尿石症、多尿症(腎疾患、糖尿病も含む)、甲状腺機能亢進症、肛門嚢炎、腸炎、便秘などです。

 しかし、それだけではなく、猫用トイレに対する不満や、マーキングのところでも書いた社会的な不安や情緒的な不安を感じる状況によって発現することもあります。それから、排泄場所としてトイレよりももっとお気に入りの場所を見つけてしまった場合も、トイレで排泄しなくなります。それは特定の場所であったり、特定の素材であったりします。フカフカの布団やソファやカーペットにすると気持ちいいかもって猫ちゃんが認識してしまうと、もうそこ以外でしたくなくなっちゃうんですね、きっと。

 あ、トイレは嫌いだけど、かといって他にお気に入りの場所もない猫ちゃんの場合、トイレのすぐ横とか前で排泄することもあるそうです。 

 

 不適切な場所における排泄は、品種、年齢、性別は特に関係ないそうですが、長毛の猫は不適切な場所における排便が多いかもしれないとのことです(おそらく統計的にでしょうね)。

 

 不適切な場所での排泄を治療する方法として、メインとなるのは次の2つです。 

 1)不適切な場所に近づけないようにするか、そこに行きたくなくなるようにする

 2)猫が好む適切なトイレを提供する 

 

 1)についてはいろんな方法があります。例えば、その場所にアルミホイルを敷いたり、ガムテープを裏にして(つまりベタベタする方を上にして)置いたり、ビニールシートで覆うなどして猫が近づけないようにします。長時間どこかに閉じ込めるようなことは、不安の原因になるので、やめた方がいいでしょう。

 

 2)についてですが、猫用トイレに対する不満は、トイレ自体に問題があるか、あるいはトイレに行く過程やトイレの使用中に問題が生じる場合があります。具体的には以下のようなものがあげられます。

  • トイレの清潔さ:トイレの清掃回数は、固まる砂の場合で1週間に1回全部の砂を交換することが推奨されています(注:ちなみに我が家ではそんなに頻繁に変えていない・・・すみません)。砂を交換する際にトイレをよく洗浄して匂いが残らないようにするとよいそうです。
  • トイレの形や大きさや砂の種類:ほとんどの猫は大きくて、浅くて、カバーのないものを好むようです。特に排便の場合は、砂が深いもの(3㎝くらい)がより好まれます。衣装用のプラスチックケースを代用したら、そこでちゃんと排泄するようになったという話も聞いたことがあります。砂の種類としては、香りのついていない固まるタイプが人気だそうですが、ある方のブログでは犬用のペットシーツに変えたらおしっこをしてくれたという情報がありました。あと、杉本彩さんお薦めの猫砂もいいというのを聞いたことがあります。ネットで調べてみたのですが、「ラヴィートワレ」っていうのと、「レスナ」っていう2種類が出てきて、どっちのことかよくわかりません。情報不足で申し訳ありません…。このように、猫によって嗜好性は異なるため、猫が好むトイレを特定するために、数種類のトイレを(トイレの種類、砂の種類や深さなど)を用意して、いろいろな場所に設置して猫の好みを探るという方法を試すのが理想です。大変ですけどね。教科書では、この方法を“猫トイレカフェテリア”と呼んでいました。なんかかわいい(笑)
  • トイレの位置:一般的に、静かな場所がいいと言われていますが、その他にも、トイレに行くまでの経路が気に入らないといったことも原因になることがあります。  

 

 いかがでしたか?この方法はあくまでも教科書的な基本となる方法です。猫ちゃんそれぞれ個性がありますから、診断や治療法は異なる場合があります。やはり、かかりつけの獣医さんに一度相談されてみることを心からお勧めします。