びび子の日記…

人生半ばで獣医師になった人間が、仕事のこと、将来のこと、愛猫のこと、日常のことなどを綴ってみました。

疲れてしまった飼い主さんたち

   犬や猫の問題行動は、犬や猫だけの問題では済まされないことが多いです。そう、飼い主さんも問題を抱えていることが多いのです。いろんな事情があるので、あまり詳しくは言えませんが、飼い主さん自身が苦しんでいるというケースは本当によくあります。

  飼い犬や飼い猫の問題行動が原因なのか、もともとの飼い主さんの不安定な状態が原因なのかは正直わかりませんが、飼い主さんの心の病気と犬や猫の問題行動はとても複雑に絡み合ってると感じています。そういう人は、自分の犬や猫の問題行動を誰にも言えず一人で抱え込んでしまい、本を読んだり、ネットで調べたりして、余計に混乱してしまったり、何気に話しをした周りの人の心無い言葉に簡単に傷つけられたり…。時には助けを求めて訪れたトレーナーさんや獣医師から傷つけられることもあります。「育て方が間違った」とか「神経質になりすぎだ」とかね。ボロボロになって、最後に行動治療にやって来られる飼い主さん、意外と多いんですよ。

 たぶん、みなさんは動物が好きで飼い始めますよね。きっと楽しい生活になるだろうと期待して…。 それなのに、なんで苦しめられちゃうのかな。心無い言葉を言う人たちにますます傷つけられている姿を見ると、「お願いだからそっとしてあげて」と言いたくなります。自分の犬の問題行動に悩んで行動治療を受けに来てくれたある飼い主さんは、そのことをご自身が通われている心療内科の先生に話したところ、「犬なのに?」と笑われたそうです。先生は悪気がなかったと思うのですが、この反応に深く傷つけられたと言っていました。

 たかが犬?たかが猫?そんな「たかが」の存在に振り回されるのは耐えられない?

   でもね、辛いのは犬や猫もおんなじです。犬や猫は飼い主さんとの生活がすべてなのです。飼い主さんの行動、態度、言葉を全身で受け止めます。どうか、その時の気分で態度をコロコロ変えないであげてほしい。もちろん、そんな飼い主さんを受け入れてくれる子がほとんどだと思います。だって何があっても、飼い主さんのことが大好きだから。

 でも、動物の性格はそれぞれです。元々怖がりな子もいれば、辛い経験をして怖がりになってしまった子もいます。彼らは言葉でストレスを表すことができません。その気持ちを表現するのに、攻撃という手段を取る子もいれば、自分を傷つけて落ち着かせる子もいるし、下痢や嘔吐といったことで表現する子もいます。

 私は動物の行動治療が専門なので、人間側の心の病気にまでは踏み込めません。ここが難しいところです。頑張ってる飼い主さんに、頑張りましょう!って言えないことも多々あります(汗)

 でも、犬や猫は単なる癒しではないよー、一生懸命飼い主さんの気持ちをわかろうとしてるんだよー、そして自分の気持ちをわかってもらおうと頑張ってるんだよー!ということを伝えたいし、やっぱりこの子と暮らして良かったなって思ってもらいたい。飼い主さんと犬や猫たちの橋渡しになることが自分の役目だと自負して、自分なりのやり方でゆっくりゆっくり精進していきたいと思うのであります。