びび子の日記…

人生半ばで獣医師になった人間が、仕事のこと、将来のこと、愛猫のこと、日常のことなどを綴ってみました。

愛犬との散歩について思うこと

犬の問題行動治療の現場に立たせていただき、最近思うことがあります。

愛犬とのお散歩を楽しんでいない方が多いなと…。お散歩が義務のようになっている方が本当に多いと感じます。

 

まず考えてみてください。お散歩は誰のために行くのでしょう?そうです、犬のためです。ここで義務感のようなものが生まれてしまう方は案外多いのですが、せっかくの愛犬と過ごす貴重な時間を、私はもっと楽しんでほしいなと思うのです。

 

犬は散歩が大好きです。大好きな散歩に連れて行ってくれる飼い主さんも大好きです。でも、飼い主さんが「めんどくさいな~」と思いながら散歩をさせられていたら、犬は楽しいでしょうか?せかされるような散歩は、犬も飼い主さんも苦痛になってしまいますよね。

 

「匂いを嗅いでばかりで、ちっとも進んでくれない。忙しくて時間がないのに…」という飼い主さんがいました。匂いを嗅ぐことは、犬にとって他の犬のことを知るための大切な情報源です。思う存分嗅がせてあげてください。満足したら先に進んでくれるはずです。

 

「他の犬に反応して吠えるから散歩がしにくい」という飼い主さんもいます。普段他の犬と接触がない子は、過剰に反応することがあります。遊び好きな子も、反応することが多いです。どこまで飼い主さんが受け入れてあげるか、また愛犬や相手の犬の攻撃性、さらには相手の犬の飼い主さんの反応によって、挨拶をさせてあげるか、そのまま素通りさせるかなどさまざまですが、どうしても吠えてほしくない場合は、うまく方向転換して気をそらせてあげてください。その時、飼い主さんが普段から犬に話しかけ、飼い主さんに魅力があれば、一瞬でもこちらに向いてくれるはずです。その隙に、うまく誘導して方向転換してしまいましょう。

 

お散歩しながら、ぜひ愛犬とお話ししてください。外で犬と話すなんて、恥ずかしいですか?そんなこと言わずに、どんどん話しかけてください。名前を呼んですぐおやつをあげるのもよいと思います。そうすると、話しかけられると、犬はあなたを見てくれるようになります。他の犬を見て興奮する前に、優しく名前を呼んだり、話しかけてあげると、こちらに反応してくれるようになります。間違ってもリードをぐいぐい引いて、無理やり引きずることのないようにしましょう。

 

リードショックというトレーニング方法があります。犬の首にショックに与えることで、犬に言うことをきかせるというものですが、犬にとっては苦痛です。特に小型犬の場合は、頸椎や気管に影響を与える可能性もあるので、おすすめはしません。何と言っても、「他の犬に会うとリードをグイッと引っ張られて何だか嫌だ」ということから「他の犬に会う=嫌なことが起きる」という悪いイメージもつきやすくなります。その結果、他の犬に対する印象がますます悪くなるということも起こり得ます。

 

ですから、すぐに飼い主さんに注意を向けてくれるよう、普段からのコミュニケーションが重要になってくるんですね。犬にとって魅力的な飼い主さんであれば、振り向いてくれるはずです。それが、おやつをくれる人でもいいと思うのです。「うれしい」を提供してくれる人なのですから、とっても魅力的です!

 

つい先日、「時間がなくてイライラしてしまうなら、いっそのこと散歩に行かない方がいいですか?」という質問を受けました。確かにそのような状態であれば、散歩には行かない方がまだましかもしれません。でも、散歩は犬にとって数少ない楽しみの一つです。人間の場合は、趣味などで息抜きをする方法がたくさんあると思いますが、犬にとっての散歩はまさにリフレッシュの時間です。時間がないのなら、ぜひその時間をあえて作っていただきたいと切に願います。もちろん、飼い主さんや犬の体調が悪い時や天候が悪い時には無理して行く必要はありませんが…。

 

余談ですが、私は2年前に愛犬を亡くしました。お散歩が大好きで、そんな愛犬の姿を見るのも楽しくて、行ける時は夕方2時間くらい散歩していました。ずっと歩き続けるのではなく、途中ベンチに座ったり、公園の芝生に座って過ごす時間もありました。「楽しいね~」、「気持ちいいねえ」と話しかけ、ちょこちょこおやつをあげながら散歩をしていました。あえてコースは決めず、行ったことのない場所を探索するのも楽しかった記憶があります。亡くなってしまった今、彼女とはもうお散歩ができません。今、愛犬と過ごすことのできる貴重な時間をみなさんも大切にしていただきたいと心から願います。

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お散歩の時のショットです。

お散歩一緒に行きたいな~…